倫敦6☆ | 月刊ビオラ~Shimpei特集記事~

倫敦6☆

 橋でたそがれてみる  テート美術館内かっこぉいい

 朝9時半、歯ブラシをしてから、無事チェックアウトも終える。朝の爽やかさのなかを、セントポール大聖堂の鐘が壮大に駆け巡る。そこから延びる橋を渡れば、テート・モダンだ。テムズ川の対岸にある、世界最大級の現代美術館。20世紀の巨匠アーティストが名を連ねる。

 ピカソ、マティス、ウォーホル・・・。こういった巨匠たちを、本気で称える友達には未だに出会ったことがない。「理解できないもの」、「子供が描いたような絵」、「俺にでも描ける」というのが世間一般の通念だろう。もし、これを読んでくれているあなたが称えているなら、ぜひ俺に話を聞かせてください。なぜ、これほど、20世紀の芸術をリードするほど、スゴイ絵なのかを。俺は、「理解できない」ものを理解したいのだ。絵画のスペシャリストが、最終的にたどりついたのが「子供が描いたような絵」だという秘密を知りたいのだ。「俺にでも描ける」絵に、その人生の価値観すべてを賭けた思いへ馳せてみたいのだ。

 20世紀の絵画は、そう簡単には理解させてくれない。おそらく、ガチガチの思考に頼るより、感覚のアンテナを働かせるべきなのだろう。鑑賞する側に委ねられた役割。心をオープンにすること。固定概念を一旦崩すこと。感じることは何でも感じ取ること。自分自身で想像を創造すること。今の俺が思いつく術はそんなところ。その良さを未だに知らない世界に、足を踏み入れるのは、とてもワクワクする。きっと理解できたときに、共感できたときに、眺める景色は格別だろう。その扉を開くことに挑戦しないなんてもったいない。

 現代美術の謎を解く鍵探し。これがテート・モダンでの目的だ。

コベントガーデン  本気で楽しんでる

オーマイレイディ いきなりどこからかクラシックの音色が。人混みをかきわけかけよる。

ジャンプ 微妙な力のかけかたで違ってくる。レッド  ブラームスやヴィヴァルディ、ラテン系のタンゴまで。

 1stヴァイオリンのおじさんは笑顔でクインテットを引っ張る。難易度の高い弓使いでも軽々と弾きこなし、難しさを感じさせない。安心感を全体に与えている。音はしっかりと芯があり、よく通っている。このように主旋律の安定を保てたときこそ、伴奏は自由に自分を出せるのだろう。となりで弾く2ndヴァイオリンのお姉さんは冷静に1stを支えている。リーダーのサポートをし、かつ、常にクインテットの和を整えている。チェロは正確にリズムを刻み、それが強靭な機関車のように音楽の推進力となっている。かたや踊るようなメロディーを弾かせれば、機関車トーマスに化けるのであった。

 その機関車を支えるレールとなっているのがコントラバスだ。すごい迫力。鋭い眼力で観客をにらみつけながら、耳は完璧なまでに音楽の方向に傾けている。大胆にピチカート(弦をはじくカッコいい奏法)をし、時には指板を手のひらで激しく叩きつける。少しでもタイミングを間違えば音楽を崩壊させてしまうだろうが、逆にそこから音楽を造り出している。神経を使うはずのレールの切り替えも大胆にさばいてしまう。音楽の方向付けが積極的なのだ。そんな力強さが全体を底上げし、活気を与えている。そしてヴィオラ。積極的に遊んでいる。ヴァイオリンとヴィオラは、光と陰の関係。その陰がブラックであるほど、そこから突き抜ける光は輝く。澄んだ黒を作るには切れ味の良い鋭さが要る。概して、ヴィオラは消極的になりやすい。なくても、なんとか音楽に聞こえてしまうから。しかしそれでは、全体がグレーにぼやけてしまうのだ。コントラストのあるモノクロ写真のように、深みのある黒が全体に奥行きを与える。

 ダッ、ダッ。そんな個性豊かな五人がいっせいにジャンプ。おっと、座っているチェロを除いて。軽快なリズムに合わせてステップを踏む。かと思えば、クルクルといっせいに回転しだす。素晴らしいパフォーマンスだ。視覚的にも楽しませてくれる。五人の息がそろっているからこそ成せる技。音色は、弓の微妙な力加減で変わってしまう。演奏中に動くなんて信じられない。わまりの音に常に反応していかないと

 もう、お気づきだろうか。これは合奏だけに言えることではない。音楽をつくるときに限らず、どんな組織を作るときでも、リーダーは安定を保ちつつ、挑戦していくのが得策なはず。必ず、それをサポートし、全体を考える人間は必要だ。また、リーダーだけでは組織は動かない。実際にプロジェクトを動かす推進力が要る。それを底から盛り上げるのも大切だ。組織に厚みがあるほど、バラエティがあるほど、応用力があるし、思考は柔軟だ。チームワーク、楽しさと厳しさの共存だ。


魔法にかかった  

魔法

デパート 安くなってるからねぇ そうか安くなっているのか・・・ん?からねぇ

しんじさん

    ボーンマスに帰ってきた         しみじみきれいだなあ