倫敦1☆ | 月刊ビオラ~Shimpei特集記事~

倫敦1☆

5月28、29日


 ロンドン旅行。

 7時発の長距離バスに乗るために、朝五時に起床。昨日はオケの練習が夜九時半まであったから、寝るのが遅くなり、眠い。ホストを起こさないよう、静かに朝食をとって、体を覚ます。日本人の友達二人と行く旅行。前に一度、学校の遠足みたいなのでロンドンに行ったが、全然時間が足りず、今度は泊まりで行くことを待ち望んでいた。最初はひとりでチャレンジしてみようと思っていた。日本人だけで行動するのが好きではないから。わざわざ日本人が少ない街にやってきた意味が薄れるから。でも、色んな情報を持った人たちと行くことで、旅行の幅が広がるかも、と思い直した。今回はイギリスの中のニッポンを満喫してこよう。英語のお勉強は一休み。リフレッシュ。

 刻しそうだから急いで家を出る。朝からダッシュか、と思いながら小走り。ボーンマスは残念ながら曇り。早朝のにおい。引き締まる。お、やばい。かばんの中に学生証が見当たらない。もう、準備不足な自分、困る。家に逆小走り。机の上にも見当たらないから、かわりにパスポートを厳重にかばんにしまう。ID認証のためだ。月と星がさりげなくデザインされているお気に入りの腕時計を見ると、時間がないよっシンペイ、という現実を突きつけられた。また小走り。こんなギリギリさを反省しつつ、つらい状況をうまく乗り切っていくのを、実は心のどこかで楽しんでいるのであった。という余裕さも、いよいよなくなってきた三十分後、やっとあせりだす。バスに乗り遅れたら、しゃれにならない。道路を息を切らして走っていると、一台の車が自分を追い越し停まるのが見えた。直感で、救いの天使だとみた。駆け寄ると、車内には友達と、そのホストマザーが。天使の乗り物に揺られ、パスストップに到着。気づいてくれて、笑顔で助けてくれて、ありがとうございました。

 スで三時間、北海道のような広大な高原を抜ける。緩やかな起伏がすべて緑。といっても、北海道には一度も行ったことないんだけどね。普通に馬や羊や牛が、放牧されていて感動。一面の緑の上でくつろぐ動物たちって見ていて気持ちよい。雲はしだいに薄くなり、これまた気持ちよく晴れてきた。高速道路を降り、徐々に市街地へ。石造りの巨大都市という風貌。町並みは歴史を感じさせ、石のマンションには細かな彫刻。バスはやっとヴィクトリアにあるコーチステイションに到着。東京並みに人がいる。街をゆく人々は国際的だ。そこで友達の友達とおち合う。ロンドン大学で歴史を学んでいる日本人学生だ。昼二時まで案内してくれるそうだ。ボーンマスに住む俺たちはポカーンと喧騒を眺めざるを得ない。彼は容易く駅内の放送を聞き取り、バスとチューブ(地下鉄)共通の一日乗車券を案内してくれた。俺は駅の自動改札はイギリスに来て初めて。どきどきしながらカードを入れ、出てきたカードを極端に凝視しながら取る。スピードが速い都会では、要領を得るまで大変だ。

 んな駅構内で見つけた、驚きの一品。

              sushi  

 店「WASABI」にある「SUSHI」だ。観察していると、けっこう人気。意外に欧米人がかなり買っていく。寿司はほとんどのイギリス人が知っている。とても高価な日本料理の代表として。そんなイメージの中、こうして安く小売してるのはナイスアイデアだ。フィシュandチップスもテイクアウェイ(テイクアウト)が一般的。ここはサンドウィッチを発明した国。だから、こう気軽に持ち帰れて手で食べられるのが良いのかなと思う。久々に日本を見た気分で、故郷を感じてじんときた。日本でたとえば「かっぱ寿司」を見ると、食欲をそそられるだけ。全く違った感覚だ。自分がどこに居るかで、同じものでも、違って見えるのって不思議で神秘的。寿司ネタご飯と一緒にふるさとが詰まっているのだな。

   車内  s

 前11時、ヴィクトリア駅からチューブに乗ってウエストミンスター駅へ向かう。チューブは日本の地下鉄よりずっと小ぶりだ。俺の身長でも窮屈に感じるから、一般的に体格が大きいヨーロッパの人たちはたいへんだろう。日本をウサギ小屋と揶揄するならば、チューブはウサギ列車に違いない。歴史的な町並みの地下には、チューブが縦横無尽に走っている。2、3分に一本だから、東京のそれよりも多いかもしれない。Circle lineという路線はエリア1と呼ばれるロンドン中心地のまわりを走っている。加えてCentral lineはそれを東西で結んでいる。山手線と中央線だ。大阪環状線と東西線だ。

 ンドンというメトロポリスはどこか未来的なものを感じさせる。それは、日本より進んでいるからではなく、今まで慣れ親しんできた日本の大都市とは違う異世界だから。未来、という意味は「ただ時が過ぎていく」というだけではなく、「今とは別の、もうひとつの世界」という願いが込められているように思った。

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