イギリス上空☆ | 月刊ビオラ~Shimpei特集記事~

イギリス上空☆

れから3時間後、急に高度を下げ、眼下にあった雲海の層を抜ける。その厚い膜の嵐を抜け出すと、突然、真っ暗闇の大地に微細なネオン色が目に飛び込んでくる。ほお、自分はラピュタにいるんだな、そう錯覚できる。中心地から伸びる道路ネオンの重なり。それを上空から眺める不思議さ。自分がミクロになって、微生物を俯瞰しているよう。菌糸がごとく、暗闇に触手を派生させるオレンジの脈たち。生命の神秘。人間が大自然に根をはるしたたかさに思いを馳せた。

 

始単細胞生物が共生して多細胞生物になったように、人間も社会という名の生き物を構成している。その生き物をこうして俯瞰してみると、それはまさに生きているように思えるのだ。社会のうごめき。生物がさまざまな代謝のシステムを構築しているように、社会もマーケットを中心に自然淘汰を繰り返す。国と呼ばれる大きな細胞を造り、互いに機能し合っている。人々は浸透を試みる。細胞の種類ごとに化学反応を起こすルールが整っているように、法律が機能している。金融市場は高度に電子化され、グローバルにつながった電脳空間で巨額の電子マネーが血液のように駆け巡る。自己のDNAを残そうと躍起になりすぎ、ガン細胞のように他国を爆撃する国もある。多田富雄博士が論じているように、統括機関があいまいなままの「スーパーシステム」が社会に存在する。