日本語ってさ☆ | 月刊ビオラ~Shimpei特集記事~

日本語ってさ☆

田からの6時間、香港から12時間、もう夜が明けてもいいものなのにちっとも明かない。長い長い夜。寝ても寝ても夜。やっとヒースローに到着。飛行機を降りイギリスの土地を踏む。アラブ系の客室乗務員におじぎをすると、それで日本人とわかったのか、アリガァトと言ってくれた。久しぶりの日本語。しみた。その一単語が満面の笑みをもたらした。

っと日本語、母国語というものは、脳内にインストールされたソフトウェアという、単なる電気信号の集まりを超越している、と思うのだ。俺たちは、言葉を通して、ふるさととつながっている。原稿用紙何枚分もの思いが詰まった、ありがとう、という言葉を受け取り与えた経験があるだろう。チョムスキー氏がいうところの「言語習得装置」は、単純な言語の情報だけでなく言葉を覆うものも習得させるのだろう。ありがとう、という言葉。感謝の意、という意味のデータ情報の背後に広がる日本。ふるさとを背負った言葉たち。サンキューとありがとうでは、それぞれに異なる、ふるさとの膨大な情報が凝縮されているのだ。アルザス・ロレーヌ地方の言葉の悲劇、日本が戦時中にした惨い同化政策、今なら前より共感できる。自分の母なる言葉を大切にしていきたい。その気持ちが、他国の言葉も大切にすることにつながるだろう。